※各史料の本文は『国造制の研究』参照。

 

九 西海道

 

117 筑志国造 

 

【所在】筑前国・筑後国(現在の福岡県)。

【氏姓】筑紫君を称した。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に日道命(大彦命の五世孫)を国造に任命したとあり、孝元天皇・阿部氏系に分類される。

【備考】岩戸山古墳(福岡県八女市)の被葬者は筑紫君磐井と考えられている。

 

(1)『古事記』継体段

(2)『日本書紀』孝元七年二月丁卯条 

(3)『日本書紀』継体二十一年(五二七)六月甲午条 

(4)『日本書紀』継体二十年辛卯条

(5)『日本書紀』継体二十二年十一月甲子条

(6)『日本書紀』継体二十二年十二月条

(7)『日本書紀』欽明十五年(五五四)十二月条 

(8)『筑後国風土記』逸文 磐井君(『釈日本紀』)  

(9)『筑後国風土記』逸文 筑後国号(『釈日本紀』)  

 

118 竺志米多国造 

 

【所在】肥前国三根郡米多郷を中心とする地域(現在の佐賀県上峰町一帯)、あるいは筑前国夜須郡馬田郷・下坐郡馬田郷を中心とする地域(福岡県朝倉市一帯)。

【氏姓】米多君・末多君などと推定されている。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に都紀女加(稚沼毛二俣命の孫)を国造に任命したとある。

 

(1)『古事記』応神段

 

119 豊国造 

 

【所在】豊前国・豊後国(現在の福岡県東部・大分県)。

【氏姓】豊国直・豊直と推定されている。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に宇那足尼(伊甚国造と同祖)を国造に任命したとあり、アメノホヒ・阿波国造系に分類される。

 

(1)『豊後国風土記』総記

(2)『先代旧事本紀』巻五「天孫本紀」 

 

120 宇佐国造 

 

【所在】豊前国宇佐郡(現在の大分県宇佐市一帯)。

【氏姓】宇佐君と推定されている。

【系譜】橿原朝御世(神武朝)に宇佐都彦命(高魂尊の孫)を国造に任命したとあり、タカミムスヒ・葛城国造系に分類される。

 

(1)『日本書紀』神武天皇即位前紀 甲寅年十月辛酉条 

(2)『先代旧事本紀』巻三「天神本紀」

 

121 国前国造 

 

【所在】豊後国国埼郡国前郷(現在の大分県国東市)。

【氏姓】国前臣と推定されている。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に午佐自命(吉備都彦の六世孫)を国造に任命したとあり、孝霊天皇・吉備氏系に分類される。

 

(1)『古事記』孝霊段

(2)『日本書紀』景行十二年九月戊辰条

 

122 比多国造 

 

【所在】豊後国日高郡(現在の大分県日田市一帯)。

【氏姓】国前臣と推定されている。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に止波足尼を国造に任命したとあり、タカミムスヒ・葛城国造系に分類される。

 

123 火国造 

 

【所在】肥後国(現在の熊本県)。

【氏姓】肥君と推定されている。

【系譜】瑞籠朝御世(崇神朝)に遅男江命(貴多奈彦命の子)を国造に任命したとあり、神武天皇・多氏系に分類される。

 

(1)『古事記』神武段

(2)『日本書紀』景行十二年十二月丁酉条 

(3)『肥前国風土記』総記

(4)大宝二年(七〇二)「筑前国嶋郡川辺里戸籍」(『大日本古文書』一―九七)

 

124 松津国造 

 

【所在】肥前国(現在の佐賀県)と推定される。

【氏姓】不明。

【系譜】難波高津朝御世(仁徳朝)に金弓連(物部連祖伊香色雄命の孫)を国造に任命したとあり、ニギハヤヒ・物部氏系に分類される。

 

125 末羅国造 

 

【所在】肥前国松浦郡(現在の佐賀県唐津市・伊万里市一帯)。

【氏姓】不明。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に矢田稲吉(大水口足尼の孫)を国造に任命したとあり、ニギハヤヒ・物部氏系に分類される。

 

(1)『古事記』仲哀段

(2)『日本書紀』神功皇后摂政前紀 仲哀九年四月甲申条

(3)『肥前国風土記』逸文 帔揺岑(『万葉集注釈』)

 

126 阿蘇国造 

 

【所在】肥後国阿蘇郡阿蘇郷を中心とする地域(現在の熊本県阿蘇市一帯)。

【氏姓】阿蘇君と推定されている。

【系譜】瑞籠朝御世(崇神朝)に速瓶玉命(神八井耳命の孫)を国造に任命したとあり、神武天皇・多氏系に分類される。

 

(1)『古事記』神武段

(2)『日本書紀』景行十八年六月丙子条

(3)『日本書紀』宣化元年(五三六)五月辛丑条

(4)『続日本後紀』承和十四年(八四七)七月丁卯条 

(5)『肥後国風土記』逸文 閼宗岳(『釈日本紀』)

(6)『肥後国風土記』逸文 阿蘇郡(『阿蘇文書』)

(7)『延喜式』巻十 神祇十 神名下 肥後国 

 

127 葦分国造 

 

【所在】肥後国葦北郡葦北郷を中心とする地域(現在の熊本県芦北町一帯)。

【氏姓】葦北君・刑部収負と推定されている。

【系譜】纏向日代朝御世(景行朝)に三井根子命(吉備津彦命の子)を国造に任命したとあり、孝霊天皇・吉備氏系に分類される。

 

(1)『日本書紀』敏達十二年(五八三)七月丁酉朔条 

(2)『日本書紀』敏達十二年(五八三)是歳条 

 

128 天草国造 

 

【所在】肥後国天草郡天草郷を中心とする地域(現在の熊本県天草市一帯)。

【氏姓】不明。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に建嶋松命(神魂命の十三世孫)を国造に任命したとあり、カミムスヒ・紀伊国造系に分類される。

 

129 日向国造 

 

【所在】日向国(現在の宮崎県)。

【氏姓】不明。【系譜】軽嶋豊明朝御世(応神朝)に老男(豊国別皇子の三世孫)を国造に任命したとあり、景行天皇系に分類される。

 

(1)『古事記』景行段 

(2)『日本書紀』景行十三年五月条 

 

130 大隅国造 

 

【所在】大隅国大隅郡大隅郷を中心とする地域(現在の鹿児島県東部一帯)。

【氏姓】はじめ大隅直を称し、のち忌寸に改姓した。

【系譜】仁徳帝代(仁徳朝)に伏布を国造に任命したとある。

 

(1)『日本書紀』天武十四年(六八五)六月甲午条

 

131 薩摩国造 

 

【所在】薩摩国薩摩郡(現在の鹿児島県西部一帯)。

【氏姓】薩摩君・阿多君と推定されている。

【系譜】仁徳朝代(仁徳朝)に日佐を国造に任命したとある。

 

132 伊吉嶋造 

 

【所在】壱岐国壱岐郡(現在の長崎県壱岐市一帯)。

【氏姓】壱岐直と推定されている。

【系譜】磐余玉穂朝御世(継体朝)に上毛布直(天津水凝の後)を国造に任命したとある。

 

(1)『新撰姓氏録』右京神別

(2)『令集解』職員令神祇官 直丁二人注 

(3)『類聚国史』巻十九 国造 天長五年(八二八)正月丁丑条 

 

133 津嶋県直 

 

【所在】対馬国上県郡・下県郡(現在の長崎県対馬市一帯)。

【氏姓】津嶋県直・直と推定されている。

【系譜】橿原朝御世(神武朝)に建弥己々命(高魂尊の五世孫)を国造に任命したとあり、タカミムスヒ・葛城国造系に分類される。

 

(1)『古事記』神代上 

(2)『日本書紀』顕宗三年四月庚辰条 

(3)『令集解』職員令神祇官 直丁二人注 

 

134 葛津立国造 

 

【所在】肥前国藤津郡(現在の佐賀県鹿島市・嬉野市・太良町一帯)。

【氏姓】葛津直と推定されている。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に若彦命(大名茅彦命の子)を国造に任命したとあり、カミムスヒ・紀伊国造系に分類される。

 

(1)『日本三代実録』貞観八年(八六六)七月十五日丁巳条

 

135 多褹嶋 

 

【所在】多褹国(現在の鹿児島県種子島・屋久島)。

【氏姓】多褹直と推定されている。

【備考】諸本では本文を欠いている。後から追加されたと見る説もある。

 

(1)『続日本紀』天平五年(七三三)六月丁酉条