※各史料の本文は『国造制の研究』参照。

 

七 山陽道

 

84 針間国造 

 

【所在】播磨国飾磨郡(現在の兵庫県姫路市)。

【氏姓】播磨直・佐伯直と推定されている。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に伊許自別命(稲背入彦命の孫)を国造に任命したとあり、景行天皇系に分類される。

 

(1)『日本書紀』仁徳十六年七月戊寅条 

(2)藤原宮木簡(『藤原宮木簡』二―六三二)

(3)『播磨国風土記』飾磨郡 

(4)『新撰姓氏録』右京皇別

 

85 針間鴨国造 

 

【所在】播磨国賀茂郡(現在の兵庫県小野市・加東市・加西市一帯)。

【氏姓】針間直・針間国造と推定されている。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に市入別命(御穂別命の子)を国造に任命したとあり、崇神天皇・上毛野国造系に分類される。

 

(1)『播磨国風土記』賀毛郡条 

(2)『播磨国風土記』賀毛郡条 

(3)『新撰姓氏録』未定雑姓 河内国

 

86 明石国造 

 

【所在】播磨国明石郡明石郷(現在の兵庫県明石市・神戸市一帯)。

【氏姓】海直と推定されている。

【系譜】軽嶋豊明朝御世(応神朝)に都弥自足尼(八代足尼の子)を国造に任命したとあり、シヒネツヒコ・大倭国造系に分類される。

 

(1)『播磨国風土記』明石郡条 逸文(『釈日本紀』)

 

87 美作国造 

 

※「国造本紀」は、美作国(現在の岡山県北東部一帯)の設置記事となっている。

 

(1)『続日本紀』和銅六年(七一三)四月乙未条

(2)『続日本紀』延暦七年(七八八)六月癸未条 

(3)『日本後紀』延暦十八年(七九九)二月乙未条 

(4)『日本後紀』延暦十八年(七九九)十二月丁酉条 

 

88 大伯国造 

 

【所在】備前国邑久郡邑久郷を中心とする地域(現在の岡山県瀬戸内市一帯)。

【氏姓】吉備海部直と推定されている。

【系譜】軽嶋豊明朝御世(応神朝)に佐紀足尼(神魂命の七世孫)を国造に任命したとあり、カミムスヒ・紀伊国造系に分類される。

 

(1)『日本書紀』敏達十二年(五八三)七月丁酉朔条   

 

89 上道国造 

 

【所在】備前国上道郡上道郷を中心とする地域(現在の岡山県岡山市一帯)。

【氏姓】はじめ上道臣を称し、のち朝臣に改姓した。

【系譜】軽嶋豊明朝御世(応神朝)に多佐臣(中彦命の子)を国造に任命したとあり、孝霊天皇・吉備氏系に分類される。

 

(1)『古事記』孝霊段

(2)『日本書紀』応神二十二年九月庚寅条

(3)『続日本紀』天平宝字元年(七五七)七月辛亥条

(4)『続日本紀』天平宝字元年(七五七)閏八月癸丑条

 

90 三野国造 

 

【所在】備前国御野郡御野郷を中心とする地域(現在の岡山県岡山市一帯)。

【氏姓】三野臣と推定されている。

【系譜】軽嶋豊明朝御世(応神朝)に弟彦命を国造に任命したとあり、孝霊天皇・吉備氏系に分類される。

 

(1)『日本書紀』応神二十二年九月庚寅条

 

91 下道国造 

 

【所在】備中国下道郡(現在の岡山県倉敷市一帯)。

【氏姓】はじめ下道臣を称し、のち朝臣に改姓した。

【系譜】軽嶋豊明朝御世(応神朝)に兄彦命(亦名は稲建別)を国造に任命したとあり、孝霊天皇・吉備氏系に分類される。

 

(1)『古事記』孝霊段

(2)『日本書紀』応神二十二年九月庚寅条

(3)『日本書紀』雄略七年八月条 

(4)『日本書紀』天武十三年(六八四)十一月戊申条

(5)『新撰姓氏録』左京皇別上

 

92 加夜国造 

 

【所在】備中国賀陽郡(現在の岡山県総社市一帯)。

【氏姓】はじめ賀陽臣を称し、のち朝臣に改姓した。

【系譜】軽嶋豊明朝御世(応神朝)に中彦命(上道国造と同祖)を国造に任命したとあり、孝霊天皇・吉備氏系に分類される。

 

(1)『日本書紀』応神二十二年九月庚寅条

(2)『続日本紀』天平神護元年(七六五)六月辛酉条

 

93 笠臣国造 

 

【所在】備中国西部(現在の岡山県南西部)。

【氏姓】笠臣を称した。

【系譜】軽嶋豊明朝御世(応神朝)に笠三枝臣(鴨別命の八世孫)を国造に任命したとあり、孝霊天皇・吉備氏系に分類される。

 

(1)『古事記』孝霊段

(2)『日本書紀』応神二十二年九月庚寅条

(3)『日本書紀』天武十三年(六八四)十一月戊申朔条

(4)『新撰姓氏録』右京皇別下

(5)『新撰姓氏録』右京皇別下

 

94 吉備中県国造 

 

【所在】備中国後月郡県主郷を中心とする地域(現在の岡山県井原市一帯)。

【氏姓】三使部直・仲県国造などと推定されている。

【系譜】瑞籠朝御世(崇神朝)に明石彦(神魂命の十世孫)を国造に任命したとあり、カミムスヒ・紀伊国造系に分類される。

 

(1)『日本三代実録』貞観四年(八六二)七月十日丁丑条 

 

95 吉備穴国造 

 

【所在】備後国安那郡(現在の広島県福山市一帯)。

【氏姓】阿那臣・安那公と推定されている。

【系譜】纏向日代朝御世(景行朝)に八千足尼(彦訓服命の孫)を国造に任命したとあり、孝昭天皇・和邇氏系に分類される。

 

(1)『古事記』孝昭段 

(2)『新撰姓氏録』右京皇別

 

96 吉備風治国造 

 

【所在】備後国品治郡品治郷を中心とする地域(現在の広島県福山市一帯)。

【氏姓】品遅君と推定されている。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に大船足尼(若角城命の三世孫)を国造に任命したとあり、開化天皇・和邇氏系に分類される。

 

(1)『古事記』開化段

 

97 阿岐国造 

 

【所在】安芸国安芸郡・佐伯郡(現在の広島県広島市・呉市・廿日市市一帯)。

【氏姓】佐伯直と推定されている。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に飽速玉命(天湯津彦命の五世孫)を国造に任命したとあり、アメノユツヒコ・阿岐国造系に分類される。

 

(1)『先代旧事本紀』巻三「天神本紀」

 

98 大嶋国造 

 

【所在】周防国大嶋郡(現在の山口県周防大島町一帯)。

【氏姓】不明。

【系譜】志賀高穴穂朝御世(成務朝)に穴委古命(兄多毛比命の子)を国造に任命したとあり、アメノホヒ・无邪志国造系に分類される。

 

99 波久岐国造 

 

【所在】不明。周防国吉敷郡(現在の現在の山口県東部)など諸説ある。

【氏姓】不明。

【系譜】瑞籠朝御世(崇神朝)に豊玉根命(金波佐彦の孫)を国造に任命したとあり、アメノユツヒコ・阿岐国造系に分類される。

 

(1)『日本書紀』応神二十二年九月庚寅条

 

100 周防国造 

 

【所在】周防国熊毛郡周防郷を中心とする地域(現在の山口県光市・周南市一帯)。

【氏姓】周防凡直と推定されている。

【系譜】軽嶋豊明朝御世(応神朝)に加米乃意美(茨城国造と同祖)を国造に任命したとあり、アマツヒコネ・茨城国造系に分類される。

 

(1)『古事記』神代上 

 

101 都怒国造 

 

【所在】周防国都濃郡都濃郷を中心とする地域(現在の山口県周南市・下松市)。

【氏姓】はじめ角臣(都奴臣・都努臣)を称し、のち朝臣に改姓した。

【系譜】難波高津朝御世(仁徳朝)に男嶋足尼(都怒足尼の子)を国造に任命したとあり、孝元天皇・蘇我氏系に分類される。

 

(1)『日本書紀』雄略九年五月条

(2)『新撰姓氏録』左京皇別

 

102 穴門国造 

 

【所在】長門国(現在の山口県西部)。

【氏姓】穴門直と推定されている。

【系譜】纏向日代朝御世(景行朝)に速都鳥命(邇伎都美命の四世孫)を国造に任命したとある。

 

(1)『日本書紀』神功皇后摂政前紀 仲哀九年十二月辛亥条

(2)『日本書紀』欽明二十二年(五六一)是歳条

(3)『日本書紀』白雉元年(六五〇)二月戊寅条 

 

103 阿武国造 

 

【所在】長門国阿武郡阿武郷を中心とする地域(現在の山口県山口市・萩市・阿武町一帯)。

【氏姓】阿牟君と推定されている。

【系譜】纏向日代朝御世(景行朝)に味波々命(神魂命の十世孫)を国造に任命したとあり、カミムスヒ・紀伊国造系に分類される。